〜小十郎ルート 喜多〜


これでよかったのかしら、と迷ってしまいます。小十郎が女性に興味を持ってくれたのはありがたいけれど果たしてさまにとってよい結果となるかどうか───────────。

殿の元にお留まりになられるのが良かったのかもしれないと後悔する日が来るかもしれません。でも、小十郎がまた所帯を持つことを選んでくれたことが姉としてとてもうれしかったのです。

初めてさまを拝見したとき、なんという儚い方かと思いました。駕籠に揺られ不安そうな瞳は小十郎を見て話すよりも雄弁に「助けてほしい」とおっしゃっておられました。私を見て安心されたのがとてもよくわかりましたもの。すぐに殿はさまを『竜の巫女』としてお側に置く決定をなさいました。私は賛成も反対も致しませんでした。すべては殿が決められたこと。それがご無体なことであればきっと綱元や小十郎がお止めしていたと思いますから。

それから戦に赴かれて何があったのかは存じません。小十郎はすっかりさまに心を許しているのが手に取るようにわかりました。小十郎だけではございません。殿がさまに対して特別な感情をおもちになられてしまったのもわかっておりました。私は正直───────────さまをこの伊達屋敷にお迎えしたことを悔やみました。天下に向かって邁進している殿と小十郎の障害となるようでしたら私は密かにさまを討ち果たす覚悟でおりました。ですがそれは私の早計に終わりました。さまは心底、伊達家のために働いておられるのがわかったからです。それから私は傍観を続けました。

蔦の命日が近付き、私はさまに一つのお願いをいたしました。蔦の墓参りについて行って欲しい、と。殿からもさまにそうお願いしていただくように手配も致しました。小十郎が自分の気持ちに気付いていながらなかなか踏み出せないのはわかっておりましたから、万が一の可能性をこめました。小十郎にとって蔦は忌まわしい思い出の一つでしょうが、向き合わない限り先に進むことなどできはしません。まして左門のこともございます。ですからさまのお力をお借りしたかったのです。

あの日、墓参りから戻ってきた小十郎は笑っておりました。蔦が亡くなって何年になるでしょうか。笑っている小十郎を見たのは初めてでございました。その笑顔に私は自分が間違っていないと確信いたしました。

やがてさまを真の『竜の巫女』と認める諸侯から沢山の求婚が参りました。小十郎や綱元はおそらく見越していたのでございましょう。小十郎は殿を差し置いてさまを求め、殿は蔦を小十郎に娶わせた罪だとおっしゃって身を引かれました。そのことがいつか罰とするのならば、私が甘んじて受ける所存です。小十郎はずっと、いついつまでも殿のお側にお仕えできますように。すべてはこの喜多の浅はかな企みでございました。

もうすぐ祝言でございます。小十郎の、いえ、殿の執政の妻として重臣の妻として、さまは今懸命に毎日を過ごしておいでです。愛姫さまのお側でそれを拝見しておりますとなんと愛らしいお方に巡り合えたことかと感謝いたします。願わくば小十郎とさまが睦み合う夫婦でありますように。私は姉として二人を支えられますように。伊達家がますますの発展ができますように。愛姫さまと二人御仏にお祈りする毎日が続きます。どうか。どうか小十郎が咲さまに対して犯した罪すべてを私の罪としてくださいませ。ようやく幸せをつかんだ小十郎と咲さまにたくさんの幸が参りますように。



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