〜小十郎ルート 小十郎〜
賭けをした。
もし彼女が一度でも『否』と言えば、この気持ちは諦める、と。
だが、あいつは───────────は一度も『否』と言わなかった。全て『諾』と。
毎年あの日は気が重い。蔦、俺の妻の命日だ。三回忌を迎えるまで俺は墓にすら参らなかった。葬儀にも出なかった。それだけ蔦のしたことは俺にとっては許せなかったからだ。武家の妻を何だと思っていやがるといつも忌々しく思っていた。だからなのだろう。蔦は俺に嫁いでからというもの、一度も笑顔を見せなかった。俺と夜を共にするときはいつも手を握りしめて何かに耐えるように目を閉じていた。自然、回数も減っていって、俺たちの夫婦生活はわずか半年もしないうちに破綻していた。だから子ができたときは嬉しさよりはむしろ戸惑いしかなかった。覚えは一応ある。半年に一度、契ると約束していた日にできた子だった。蔦にとってはようやく自分の味方になる子だったのだろう。その希望さえ、俺はつぶした。産まれてくる子に対して愛情など感じるはずもなかった。やがて蔦は狂って自害した。
許せなかった。すべてを投げ出した蔦を。
そして決めた。もう妻を娶ることはやめよう、と。俺は俺の一代だけ、政宗さまにお仕えできればそれでいい。左門のことはなるべく考えないようにしていた。俺にとっては戸惑いのもとでしかなかったからだ。
だがその俺の心を、は溶かしていった。俺が睨みつけてもへらりと笑ってすぐにすり寄ってくる。何故か俺を頼ってくる。最初は面倒だと思っていた。冷たくもした。政宗さまのご幼少のころと同じ瞳を持つに無体なことも言った。だが───────────は全て乗り越えてきた。
正直、乗り越えてくるとは思わなかった。潰れてしまうと思っていた。そしていつか、から目が離せなくなっている俺を自覚した。惚れてしまった、のだろう。だが俺は認めたくなかった。まして政宗さまが好いているとわかっていただけに、一生目をつぶるつもりだった。
だが、どこかで俺はを求めてしまっていた。だからあんな賭けをした。
蔦の命日にがついてこなければ───────────、墓参りに同道しなければ───────────、左門に会わなければ───────────、抱き寄せた俺の腕を拒否してくれれば───────────。
俺は賭けに負けた。一方的に仕掛けて一方的に負けた。これほど読みを誤ったのは初めてだった。だから決めた。をあきらめたくない、と。たとえ相手が政宗さまであっても。いや、政宗さまは俺の気持ちに気付いていらっしゃった。だからあえて身を引いていただいたのだとわかっていた。
家臣が主君を押しのけるなどあってはならないことだ。だが、を手に入れるためなら俺は喜んで罰を受けよう。それほどに求めてしまったのは俺の罪。それをいつか償うことになろうとも。俺はお前を離したくない。お前は俺に微笑んでくれるか、俺のものになってくれるか───────────、俺は馬鹿だな。まるで少年のころのように緊張していやがる。お前の本音を聞かせて欲しい。俺は、お前に惚れている。、お前だけを。