〜政宗ルート 成実〜
梵がどんどん変わっていく。それは感じていた。でも梵だけじゃない。小十郎───────────景綱も変わっていった。なんていうか、雰囲気が優しくなったと思う。
俺はいいと思う。が梵の元にいてくれるなら。正直『竜の巫女』なんてどうでもいいさ。だってあれは俺と梵がでっち上げた適当な伝説なんだから。それをまことしやかに信じさせたのは景綱と綱元の手腕だ。まったく油断も隙もない。だけどまぁやつらの抜け目なさと知恵が伊達をここまでにしたんだろうけどさ。
はホント、不思議な女だな。俺と話していても梵と話していても小十郎と話していても、態度が変わらない。当たり前だけど、俺は伊達の直系だ。俺の名前を知って、まっすぐに目を見て話す女なんて、どっかの姫しか知らない。愛姫や梵の側室たちはそうだ。だけど彼女たちは身分の低い人間に対しては態度が全然違う。女中たちに対するそれは相手が人間というよりも、体のいい感情のない召使に対する態度だ。俺もそれが当たり前だと思ってた。だって俺は伊達家のご一門だから。奥州の人間ならすぐにひれ伏す身分だから。でもは、違った。
みんな平等なんだ。それが兵士であっても、女中であっても、みんな対等に話をする。正直度肝を抜いた。こんなことがあっていいのか、と自問もした。だけど俺よりも先に綱元が平気な顔をしてやがったし、景綱の手前もあって俺は驚かなかったふりを貫いた。だからあいつを好きだっていうやつも多い。梵の態度が変わったのは、そう、あの出陣式の日。がどういう手妻を使ったのかわかんないけど嵐を呼んだ日。本人は「まぐれ」だって言ってたけど、まぐれであんな嵐は呼べない。それは俺もそう思う。あのとき、梵はを対等の立場として認めたんだってわかった。
それまでは面白いおもちゃだと思ってた節はあるけどな。ま、梵が若い女と見りゃ大抵本心は隠してああやって手を出して相手がどういう反応をするか見てるからな。正直性質悪い。でも梵に媚びなかったのはだけだった。梵の側室たちはすぐに梵に媚びを売った。だから梵は全員心の中で斬り捨てた。梵個人じゃない、梵の身分にしか興味のない女たち。俺も似たような立場だから梵の気持ちもわかる。別に自分じゃなくたっていい。今の自分の身分を持ってりゃ、おっさんだろうと、じじいだろうと、あの女たちは媚びを売ってきただろうと思う。でもは最後まで梵に抵抗した。
梵の話を聞いているともふつうじゃない人生を送ってきたみたいだ。言葉の端々にあまり家族に恵まれてないことはわかる。梵がに対して同情を覚えるのもわかる。対等の立場として認めたの境遇に梵は自分を重ねていた。
だから梵はに惚れたんだろう。つか、梵にあそこまで言わせたのはだけで、梵にとっては初めて惚れた女なんだろうな。愛姫に感じる気持ちとに感じてる気持ちが違うなんてこと、見てりゃすぐにわかる。だからあんなに手を伸ばして、そしてつかんだ。だから梵は今は幸せなんだろうと思う。だけどさ、梵。本当に、いいのか?は、お前の愛する人になれば、お前の弱点になるぞ。だからお前は今まで誰にも心を開かなかったんじゃないのか?
まぁ、俺が言っても説得力ないけどさ、俺にも家族がいて、梵の幸せな顔を見てると、俺も妻と子に会いたくなるからさ。あ〜あ、早く春にならないかな。大森に帰りたい。
にしたって梵のヤツ、毎日を抱いてるみたいで最近がなかなか起きてこないと喜多がこぼしていた。あまりがっつくと逃げられても知らないからな。忠告しようとしても睨まれんのは俺だからやーめた。小十郎にでも押し付けて俺は俺で米沢を満喫しよう。大森の家族に会う日を楽しみにして。