〜政宗〜
欲しい───────────。心からそう思った。アイツを、いや、アイツの全てを俺のモノにしてぇ。アイツが見るのは俺だけでいい。こんな独占欲、俺は知らねぇ。俺が俺じゃなくなりそうなほど、アイツが欲しい。
似てる、と思った。俺の幼い頃に。右目を失い、母から見離され、誰も俺の味方はいねぇと思っていた時の俺と同じ目をしてやがった。おどおどと周囲を伺い、手を差し伸べられてもそれが是か否かわからないまま、結局誰の手もつかめねぇ。自分で決断もできねぇ。適当に過ごしていつ死んでも構わねぇ。誰からも必要とされねぇ、そんな痛みをアイツは知ってる。その時からだ。アイツが欲しい、と思うようになったのは。
「」
出陣した後の本陣でうつむいたままのアイツに声をかけるとビクン、と身体を震わせておどおどと俺を見上げる。それがまた嗜虐的でもっとその表情を見てぇという気持ちと、その瞳から憂いがなくなったのを見てぇと相反する欲が俺の身体ん中で渦巻いてやがる。
「Come on」
「う・・・・・・はい・・・・・・」
陣の隅で膝を抱えたままのを呼ぶと小さな声で返事をしてくいと俺の側を指せば、とぼとぼと寄ってくる。コイツが俺や小十郎のことを怖がってんのはわかってる。逃げようとしねぇのは諦めてんのか、地理がわからねぇからか。恐らく両方だと思うが、欲しいと思ったモンを俺はたやすく手放しはしねぇ。
「相手しな」
「ええと・・・・・・・?」
小姓を呼んで簡易式の囲碁を用意させる。陣を敷いているだけで、まだ相手も出てこねぇとなれば俺のできることはほとんどねぇ。実際の指揮は成実と小十郎に任せていれば安心だ。アイツらは俺の手足でもある。俺の意を汲んで二人とも抜かりなく用意してるはずだ。だから手慰みに囲碁やら双六やらを持ち込んでいる。戦であっても余裕は必要だ。たとえ本当はそんなことはなくても余裕を見せることは必要だからだ。
だが用意させているそれを見つめてアイツは首をひねりやがった。コイツは異世界から来たせいか、時々こっちの常識ってモンを知らねえ。まさかとは思うが。
「Ah?囲碁知らねぇのか?」
「う、うん。知らない」
「お前がいたところは囲碁もねぇのか?」
「ううん。あるよ。ただ私がやり方を知らないだけ」
「だったら教えてやる」
「あ・・・・・・う・・・・・・」
じろ、と見れば逃げ出す口実を考えているように視線が動くが、結局理由が見つからなかったらしい。諦めたように視線を下ろしたに俺はわからないように笑みを浮かべた。
結局教えながらもコテンパンにしてやった。は「あ・・・ぅぅ・・・・」と意味の分からねぇ言葉を言いながら俺を恨めし気に見上げてくる。だが、コイツはわかってねぇ。その視線は俺を煽っているということに。
「俺の勝ちだな」
「そ、そりゃ初めてだもん。政宗さんに勝てるわけないし」
「だったら───────────何か褒美をもらわねぇとな」
にや、と笑うとは一瞬首をすくめて俺から逃げ出そうと距離を取ろうとするが、そんなお前を俺が逃がすわけねぇだろ。
「Hey、、逃げたら倍にして返してもらうぜ。You see?」
「うぅぅ・・・・・・」
「どうするのがいいか───────────」
じろ、と無遠慮にアイツの全身を見回してやる。細いが女らしい曲線にごく、と知らず喉がなりそうになるのを必死でこらえる。まだ、だ。無理やりに食ってしまってもアイツは俺のモノにはならねぇ。それじゃダメだ。アイツにとって俺はかけがえのない存在になるまで我慢だ。
「ま、帰ってからのお楽しみだな」
「ひっ───────────!?」
別にここじゃなくていい。にやにやと笑って言うと、悲鳴を上げやがった。どんな想像をしてやがんだかわからねぇが、お楽しみは後にとっておいても構わねぇ。
「、お前何か欲しいモンはあるか?」
「は───────────?」
ふと、気になって聞いてみる。この出陣の間、コイツと約束した。他の側室たちと違ってアレが欲しい、コレが欲しいとコイツは言わねぇ。ただ純粋な疑問だったんだが、きょとんとした顔で見上げてくる。
「そ、それは何?欲しいものを私の目の前に持ってきておいて、わざと政宗さんが持ってったりとかするの?」
「Ah?それもいいなぁ」
「ま、政宗さんの意地悪っ!!」
少し考えてからおどおどと視線を動かしたの言葉に思わず吹き出しそうになった。そういう考えはなかったが、コイツが俺のことをそう言う風に思ってたのか、と思う。だがまぁ、コイツの中に俺がいるのも確かなことで、そのことに満足を覚えてしまう。大概俺も重症かもしれねぇ。
「ま、考えておくんだな」
「意地悪をする人には教えません!」
膨れるに笑いが止められねぇ。何でコイツは俺に対しても小十郎に対しても、無論喜多や八重に対しても態度が変わらねぇんだろうな。だが覚えてろ。俺はお前を欲しいと思ってる。お前の中にある孤独から救い出してやる。俺にとっての小十郎のように、お前には俺がいなければダメなようにしてやる。そしてお前は俺の手に堕ちる。必ず、だ。俺を本気にさせたツケはきっちりと払ってもらわねぇとな。、覚悟しておくんだな。