〜現代リーマンパロ 美緒〜

「ねぇ美緒、お願い!!」
「えー、またぁ?」
「ごめん!迷惑なのはわかってる!お願いだから!その、形だけでもいいから!」
「あーもー、仕方ないなぁ」
「本当に!?ありがとう美緒!恩に着るわ!」

ガバっと抱きついてきたをよしよしとあやしながら、私はなんだかなぁと思う。がこんな風に変わったのはこの会社に入ってからだと思う。前までは凛々しい女性社長として社員たちからも尊敬されてたのに、この会社に入ってからはも女の子なんだなぁと思うことが増えてきた。うん、いいことなんだけど。今まで男よりも仕事!仕事!って言ってたが、男のことを気にするようになったのはいい傾向だと思うけど。問題は気にするのはともかく、逃げ回ってるからなんだけど。

「で、今週はどこのお誘いなの?」
「温泉」
「専務、やるぅ」
「美ー緒ー」
「いいじゃん、一緒に行けば。私専務はいいと思うよ?ハンサムだし、ガタイもいいし、稼ぎもいいし。浮気だってする暇なさそうだからその心配もないだろうし」
「───────────わかってるわよ」
「へぇ。じゃ何で逃げ回るわけ?」
「私は!小十郎とはもう付き合う気はないの」
「ふぅん。でも、付き合うのと結婚は違うよ?、その辺わかってる?」
「わかってるわ」

ふてくされたように言うに、もう呆れるしかない。もう何回目かわからない専務からのデートの誘いにがあの手この手で断って数か月。最初は用事があるから、と言っていたけど、あきらめない専務に最近はうちに来るというのを理由にすることが多くなった。まぁ旦那も子どもものことを知ってるし、仲がいいからいいっちゃいいんだけど。逃げ回る口実にうちの家を使われても正直困る。そろそろ何とかしないと、と思っていた矢先。ふとひらめいた作戦に私はには内緒でほくそ笑む。うん、これいいかも!

「あのさ、
「何?」
「うちに来てもいいけど、その日ほかの友達も来てるけど、いい?」
「え?そうなの?」
「うん。だから小さなホームパーティみたいなのをやると思うけど」
「そっか・・・・・それ、お邪魔してもいいの?」
「うん、が良ければね。で、どうするの?来る?」
「行くわ」
「あ、そう」

あっさりと頷いたに私はそれだけ言って飲んでいたジュースのカップを持ったまま立ち上がる。もうそろそろ休憩時間も終わる時間だったからね。

「じゃ、仕事に戻るねー」
「ええ。美緒、ありがとう」
「ううん。も頑張ってー」

そういって職場に戻ってから私はパソコンを開いてこっそりとメールを打った。返事は「OK」。うん、これで良しっと。我ながら策士だわ★週末が待ち遠しくなっちゃうね。
そして週末。お昼前後からうちの家は俄然にぎやかになった。お客さんが二人もやってきたからだ。それからすぐにチャイムが鳴った。きっとじゃないかな。旦那を残して玄関に迎えに行くと、私の予想通りが手土産のケーキを持って立っていた。

「お邪魔するわ。これ、美緒が好きなケーキ屋さんのケーキ。何人いるかわからなかったからロールケーキにしたけど」
「わー、ありがと!もうみんな来てるんだー。上がって」
「ええ」

ケーキを預かって台所に戻る。うちの家は普通の3DKの賃貸マンション。と一緒に伊達の社員になってからは私の稼ぎが良くなったからそろそろ夢のマイホームが欲しいね、と物件を探している最中だったりする。もう一人子どもが欲しいから、もうちょっと広い部屋がいいなぁって、ちょっと脱線。靴を脱いで上り込んできたがベランダに続く客間の前でぴたり、と足が止まる。で、くるりと客間に背中を向けて台所にダッシュしてきた。あら、予想通り。

「美緒・・・・・・・・」
「ん?何?」
「もしかして、ほかの友人って」
「うん。社長と専務。いつもお世話になってるから。だっては誰が来るかって聞かなかったじゃん」
「聞かないけど!普通いうでしょ!?」
「あー、はいはい、あのさ、いつまでも逃げ回ってないでちゃんと話した方がいいよ」

冷蔵庫から冷やしてあるビールを出して渡すと、は問答無用でプルトップを開ける。そんなに嫌がらなくてもいいと思うけど。そうしているうちに準備ができたみたいで客間で声が上がる。うちの旦那と社長、専務の三人でバーベキュー!と盛り上がっていたから。でも正直、うちの部屋のベランダはそんなに広くないから、大の男が三人もいたらそれだけで満杯になっちゃう。そのうちにお肉を焼くにおいが充満してきて私のお腹がぐぅっと鳴った。

「おい美緒、うまそうに肉が焼けてるぜ。Come on」
「あ、今いきまーす!」
「ちょっと、美緒!」
「えー、だってお腹すいてるし、さすが社長と専務だよ。お肉、松坂牛だって!も食べよ」

の手をつかんで客間に移動すると、専務が黙々と肉を焼いていて、うちの旦那と社長は子どもを交えて何か話をしている。お皿を持って専務のところに行くと、専務は焼けたお肉とお野菜をお皿に乗っけてくれた。相変わらず専務はフェミニストだわ。

「わー、美味しそう!」
「ああ、うまいぜ。、皿寄越せ」
「・・・・・・・・ええ」

さっそくがっつく私をよそに専務はの皿にもお肉とお野菜を乗っけてる・・・・・・ふぅん。の嫌いな野菜は避けてくれるんだ。何だかんだいってすごくいい雰囲気だと思うけど。そう思ったのは私だけじゃないらしい。社長と旦那に手招かれてそっちに行くと、社長はにやにやと笑いながら私たちに耳打ちするように小さな声で言った。

「とりあえずアイツら、二人きりにしてやろうぜ」
「え?でもここ、うちですけど」
「No problem。うちに来りゃいいだろ。ゲストルームは空いてるからな。何日か泊まってくといい。それとも、家族でどっか行きたきゃチケット手配してやるぜ」
「んーだったら、遊園地とか!」
「いいぜ。ホテルも一緒に手配してやる。但し、アイツらがくっつくように力貸せ」
「はーい」

ちら、との方を見たら、専務と何やら話をしながらお肉を食べていて、食べ終わると専務がお肉を足していっているのが見える。仲がいいんだか悪いんだか。そんな二人を見ながら社長は楽しそうに笑ってる。私たち三人は共犯者の笑みを交わして、そっと部屋を抜けだした。



二日後。出社した私はに聞いてみたところ、何もないまますぐに家に帰ったらしい。せっかく二人きりにしてあげたのに。でもまぁ、専務がを諦めるとは思えないから、早くくっついてほしいなぁ。



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