「つまんねぇ」
「は───────────?」

社長室で行儀悪く長い足を机に投げ出した姿勢で呟いて、つい反応してしまった小十郎はしまった、とばかりに眉を寄せる。今は午後一時半。秘書兼Web開発室の部長であるが昼休憩で席を外していた。の会社を接収して一ヶ月。当初は仕事のやり方だけを覚えさせてすぐに担当部署に戻すつもりであったのに、何の因果か社長である政宗のお気に入りになり、そのまま秘書の仕事を割り振られている。彼女の仕事ぶりは誰もが認めるところではあったが、政宗にとっては小十郎の弱点ともいえる彼女を手元に置いて、主にからかうことを楽しんでいるから、小十郎としては心中複雑だ。だが、彼の性格上、政宗の世話をしない、ということができないため、こうしてのいない間に政宗の相手をしているのだが。

「一月は正月、二月はバレンタイン、三月はひな祭りにホワイトデー、四月は花見、五月はゴールデンウィークだろ。なのに今月と来月は何にもねえ。退屈だ」

小十郎が無反応になる前に言い切ってどん、と机の上の足を鳴らす。

「政宗さま、机は足を置くところではございません」

こうなれば無視することも出来ずに至極当然な注意をすると、小十郎は政宗に向き直った。

「退屈でしたら今月はジューンブライドです。傘下の企業の社員や取引先からご列席をと招待状が山のように来ております。どうぞご参列ください」

そういいながら書類の中から招待状の束を取り出して政宗の前へと置いた。途端、「Shit・・・・」と不機嫌そうに舌打ちする彼をそのままに小十郎は自分の仕事に戻る。

「小十郎、ジューンブライドっていやぁ、お前とはどうなってる?」
「どう、とおっしゃいますと?」
「とぼけんじゃねぇよ。のウェディングドレス見てみてぇとは思わねぇのか?まぁ、かわいい系じゃねぇ方がいいだろうな。フリルよりゃすっきりとしたデザインの方が似合う───────────」
「政宗さま。お仕事がたまっております。そうおっしゃられるのでしたら、に休暇をやれるように仕事をなさってください」
「チッ・・・・・藪蛇かよ」

行儀悪く舌を出して毒づく上司に小十郎は半分以上本気の溜息をついた。この情熱を仕事に向けてくれれば、としみじみと思いながら完全に無視を決め込んで書類の決裁を続けてゆく。そもそもこれも政宗の仕事だというのに、彼がさぼっているから自分が代行しているだけなのだが。

「お前いいのかよ?」
「───────────」
だよ、!お前もあいつもいい年だろうがよ。このまま黙ってるんだったら見合いぐらいしやがれ」
「───────────」
「おい小十郎!」
「政宗さま」
「何だよ」
「この小十郎のことよりもご自身のことはどうなさいます?そろそろ政宗さまも───────────」
「あ〜うっせぇうっせぇ!ったく、ああ言えばこう言いやがる」

説教を始める小十郎を遮って適当な書類の束をつかみ取る。ぱらぱらとめくっているうちに、その中の一枚に政宗は手を止めた。そしてにやりと笑うと、彼は小十郎を手招いた。

「ちょうどいいPartyができそうだ」

その一言と表情から完全に面白がっているとわかる彼を止める術はない。小十郎は今度こそ本当に超弩級の溜息をついたのだった。


  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

昼休憩の時間。珍しくちょうどお昼の時間に休憩が取れた私は美緒に誘われて近くの公園で食事をとっていた。美緒は手作りのお弁当。私はワゴンで売っている日替わり弁当を広げていた。ここのお弁当は安くてボリュームがあるのに野菜中心のヘルシーメニュー。結構お気に入りでお弁当を作るのが面倒な日は買っている。今日は蒸し野菜と同じく蒸した豚肉の胡麻だれ。他愛のないことを話しながらの休憩時間はいつもと違って楽しい時間だった。そんな時だった。美緒がこんなことを言い出したのは。

「ねぇ、来月の11日の土曜日、空いてる?」

と。

「空いてるけど。どうしたの?」
「じゃあさ、社長の家のホームパーティに行かない!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

うきうき、という調子で身を乗り出した彼女に私は絶句した。いつの間にそんな誘いを受けていたのかはわからないけど、あの社長が美緒を誘うなんて珍しすぎる。なんだか嫌な予感に首を振った。

「やめとくわ」
「え〜どうして!?だってあの社長だよ!ホームパーティだよ!どんな家に住んでいるのか興味ない!?」
「・・・・・・・・・美緒、最近社長のことになるといやに積極的ね・・・・・・・」
「この間のお食事もおいしかったし、あの社長が誘ってくれる所って外れないから。うちの子供と主人もおいでって言われてるの。も一緒に行こうよ」
「遠慮したいわ。休日まであの社長と一緒にいたくないもの」
「えぇ・・・・・だったら私も行けないなぁ」
「どうして?誘われているのは美緒じゃない。行ってくれば?」
「だって部長のが行かないのに副部長の私が行くって変でしょ?」
「・・・・・・・大丈夫よ。ホームパーティでしょ?大体あの社長からして十分変だし」
「・・・・・・・、最近擦れてきてない?それ、結構ひどいよ」

箸を止めた美緒の言葉に私はがくりと肩を落とす。美緒にまでそんなことを言われるほど最近の私はひどい顔をしているのだろうか。落ち込む私の肩を美緒がぽんぽんと叩く。

「とにかく、一緒に行こう?」
「美緒、最初から無理やり連れて行く気でしょ?」
「うん!」

・・・・・・・・負けた。美緒のこの笑顔には私は弱い。はあ、と溜息をつきながら私は諦めることにした。それにしても・・・・・・ついてない・・・・。せっかくの休日にこんなことになるなんて。



 そしてその日が来た。ホームパーティとはいえ、さすがにジーンズで、というわけにはいかないから考えた末、花柄のワンピースにした。少し高いサンダルと合わせれば、どこかのバカンスに行くような恰好にもなる。さすがにスーツを着ていくとあの社長に何を言われるのかわからない。約束の時間に美緒が住んでいる最寄駅まで電車で向かう。美緒の住んでいるマンションは私と同じ沿線の二つ都内寄り。但し各駅停車しか止まらない駅だから、普段私はこの駅で降りることはない。でも今日は美緒の子供や旦那も一緒だから駅までお迎えがくるらしい。私もついでに便乗させてもらうことになり、待ち合わせの少し前に駅へとたどり着いた。駅で美緒と落ち合って、近くの果物屋で差し入れがわりの盛り合わせを購入してロータリーで待っていると、見覚えのある車が目の前に止まり、私は思わず回れ右をしそうになった。運転席には小十郎が座っていたからだった───────────。

「わ、専務自らなんてすみません」
「いや、乗れよ」
「は〜い。ほら、パパ、奥に乗って」

予想していなかったわけではないけれど頭を抱える私をよそに美緒たち三人が後部座席を占領してしまい、私はふうと溜息をついて助手席に収まった。正直、居心地が悪い。以前はこの席に座ったがために無理やりキスされる羽目になったのだ。ちら、と横目で小十郎を見ると、彼も今日はオフなのだろう。Tシャツにラフなパンツといういかにも休日、な恰好に私は思わず付き合っていた頃を思い出した。

、悪ぃな」
「・・・・・・・・何が?」
「藤田に無理に来いって言われたんだろ?」
「・・・・・・・・わかってるんだったら遠慮してよ」
「そういうなよ。俺も政宗さまに呼び出された」
「それこそ自業自得でしょ。あの社長を育てたのはあなたなんだから」

冷たく言い放って外に視線を向ける。せっかくの休日、晴天に半分仕事などやってられない。後部座席では美緒たちが滅多に乗らない車(しかも高級車)にはしゃいでいて、私はどこか行きたいなぁと思いながら視線を逸らした。そして私たちは無言のまま小十郎の車が到着したお屋敷に絶句した。都内から少し外れた場所の広大な土地。まるで京都の文化遺産のような門が開くと小十郎はそのまま車を乗り入れた。そこから玄関まで数分。横付けされたその場所で車を降りると、滅多に見ることのない豪邸に私たちはぽかんと見上げる羽目になった。

「Hey、、美緒!来たな」
「社長!お招きありがとうございます」
「そんな時に突っ立ってねぇで上がってこいよ」
「は〜い!ほら、行くわよ」

二階から身を乗り出す社長が手招くのに美緒が子供と一緒に手を振る。そして迎えに来てくれたお手伝いさんに案内されて二階へと上がり、そこに並べられていた料理にまた絶句する。どこのホテルのバイキングだ、と思うほどずらりと並んだ皿に盛りつけられた料理は芸術と言ってもいいほどで、美緒たちがはしゃぐ声を聞きながら私は思わず立ちすくんでいた。そんな私の背中から社長が声をかける。

、どうした?」
「いえ、すごい料理だと思いまして。社長、これはケータリングですか?」
「Ah?んなことするかよ。作ったに決まってんだろ」
「このお屋敷はもしかしてシェフがいらっしゃるんですか?」
「一応いるが今日は休暇だ」
「でしたらこの料理は・・・・・・?」
「俺が作ったに決まってんだろ。感謝して食えよ」
「───────────」

にやり、と笑う社長の言葉がどこまで本当なのかはわからないけど、小十郎も料理は上手だ。だから社長の言葉は本当なのかもしれない。ぐるりと部屋を見回していると小十郎と長宗我部さん、それに成実さんが階段を上がってくるのが見えた。小十郎はともかく成実さんや長宗我部さんが来ているのには驚いた。目を丸くする私に美緒はさっそく長宗我部さんに「初めまして」と挨拶を済ませている。そしてこれで全員がそろったらしく、手を鳴らした社長に全員が注目する。

「ま、今日は堅っ苦しいPartyじゃねぇ。ゆっくりとくつろいでいってくれ。それから、
「はい?」
「Come on」

簡単に挨拶を済ませた彼に手招かれて私は何のことかわからないまま彼の隣に立った。グラスを手渡されお手伝いさんたちの手によってシャンパンが注がれる。全員にそれがいきわたると社長がグラスを置いてからポケットからクラッカーを取り出した。

「よし、始めようぜ!」

そう言った社長の言葉を合図に四方からパーンと大きな音が鳴る。びっくりした私に向けて開けられたクラッカーから飛び出した紙が私の身体にかかるのをにやにやと見つめる社長を茫然と見つめた。

、Happy Birthday!」
「───────────ええと・・・・・・」

社長だけじゃなく、美緒や長宗我部さんや成実さん、そして小十郎までが手を叩いてくれるのに、私はぽかんとしたまま彼らを見回した。まだ事態がわからないけれど、社長に手を取られて我に返る。

「というわけで、今日はのBirthday Partyだ!みんな派手に楽しめよ!」

にや、と笑って号令をかけた社長に全員がグラスを掲げて乾杯をすれば、あとは無礼講。美緒たちは早速おいしそうな料理を楽しもうと皿にいっぱい乗せ始め、長宗我部さんと成実さんは私のところにやってきてプレゼントを置いていってくれた。成実さんはお洒落な入浴剤のセット。長宗我部さんは何やら発明したものらしいのだけど、何に使うのかいまいちよくわからなかった。そして美緒たちは子供の手がきの似顔絵を渡してくれた。両手にそれらを持っているわけにはいかないので、壁際の椅子に置かせてもらうと、ぽんと肩を叩かれる。振り返ってみれば社長と小十郎が立っていて、私は彼らに頭を下げた。

「社長、ありがとうございます。まさかこんなことをしていただけるとは思いませんでした」
「Ah・・・・気にすんな。俺もちょうどPartyがしたかったんだ。の誕生日が近いっていうからな。驚いたか?」
「───────────ええ。かなり」
「なら良かった。、アンタへのプレゼントだ。帰りに受け取れ」

そう言って示したのは、窓際にあるワインの棚。見れば数十本のワインが入っていて、私はまさか、と目を見開いた。

「社長、まさか───────────」
「あれごとやる。持って帰れ」
「い、いえ!そんな受け取れません!」
「何言ってんだ?アンタ、イける口なんだろ?だったら」
「そうではなく、申し訳ありませんが私の部屋には棚がおけるスペースがありませんので・・・・・もしよろしければ1本いただけますか?」
「Ah?1本と言わずに10本持って帰れ。小十郎、送ってってやるんだろ?」
「───────────は」
「・・・・・わかりました。ありがたくいただきます」

多分ここで逆らえば倍になって自分に跳ね返ってくるのはわかりきっているから素直に頷いておいた。小十郎が相手ならそのうちの1本をいただくことで話をつけることもできる、そんな内心を押し込めて笑顔で返せば、社長は私の腕をぐい、と引いた。

「言っとくが、返したりすれば会社で全部飲ませてやるからな」
「───────────わかりました」

───────────甘かった。ワインは結構好きな方だからいただけるのは嬉しいけれど、後でラベルを見て卒倒しそうになった。一本数万円のワインが惜しげもなく飾ってあったから。正直これを飲みなれてしまうと、普通の安いものが飲めなくなってしまう。そんな私の心配をよそに社長は「Good」と言って私から離れていった。ふぅ、と溜息をついた私に小十郎が苦笑していた。

「小十郎、聞いてないわよ」
「当たり前だろうが。言ったらサプライズにならねぇだろ」
「発案はあなた?」
「いや、政宗さまだ」
「───────────そう。相変わらず突拍子もない方ね」
「あまり嬉しそうじゃねぇな?」
「嬉しいわよ・・・・ただ・・・・・この年になってこんなパーティを開いていただくのはどうかって思ってるだけ」

それが正直な気持ち。もう30代も半ば。四捨五入すればアラフォーと呼ばれる世代だ。誕生日パーティーなんてもう何年もした記憶がない。はしゃぐ社長たちを尻目に私は苦笑して料理を取って椅子に腰かける。何故か小十郎も一緒についてきたけど今日はそれを言わないままにする。とってきた料理を堪能していると、小十郎は不意に離れるとそれぞれの料理を皿を取り、お手伝いさんに言って私の前に皿を置いたワゴンを引いてくる。

「小十郎?」
「いちいち取りに行くの面倒だろ?」
「───────────それがバイキングの正式な楽しみ方だと思っていたけど」
「るせぇなぁ。あぁ、お料理は政宗さまの手作りだからな。残すなよ」
「あなたも手伝ったの?」
「少しな」
「料理好きな男っていいわね。うらやましいわ」

ぱくり、とカルパッチョを食べて絶妙なレモンとお酢の配合にそう告げると、小十郎はにや、と笑って見せる。

「また作ってやるぜ」
「結構よ。その後が怖いわ」

実際無理やり抱かれた過去にちくりと言ってやれば彼は軽く肩をすくめただけで視線を逸らす。あれが彼にとって悪いことをした、という後悔はないらしい。あきれたように溜息をついて私は料理に専念することにした。だけど。


「何?」
「ほらよ」

そういいながら小十郎が小さな箱を私に差し出した。デパートの包装にリボンがかけてある小さな箱。私へのプレゼントだということはわかる。ちら、と見上げてから、私は小さく首を振った。

「受け取れないわ」
「何でだ?」
「何でも。気持ちだけありがたくもらっておくわ。プレゼントはこの料理だけで十分よ」
「おい、政宗さまたちのは受け取って俺のは受け取れねぇってどういうことだ」
「───────────気分の問題よ」

嘘だった。それよりも『好きな女がいる』という理由で見合いすら断った彼の相手は誰なのか、と社内で詮索が始まっている。無論、私の名前が一番に上がっているのは知っていた。そんな中、小十郎からプレゼントを受け取った、となれば、さらなる噂が立つのは当然で。正直それは勘弁してもらいたかった。


「何?」
「お前の上司は誰だ?」
「───────────は?」
「俺はお前の上司だろう?」
「・・・・・・・・・・・・上司じゃないとは言わないけど」
「だったら命令だ。受け取れ」
「・・・・・・・・・専務。今日は休日ですが」
「受けとれねぇというなら政宗さまに告げ口してやるぜ。お前は俺のプレゼントだけ受け取らなかった、とな。社長命令で俺のマンションに引っ越してくるのとどっちがいい?」
「───────────冗談にならないわ、それ」

実際、社長はことあるごとに私に小十郎のマンションに引っ越せ、と言ってくる。何とかかわしてはいるものの、正直あの社長の神経を逆なでするような真似は極力避けたい。そんな私の葛藤を知っている彼はずい、と私の前にその箱を差し出した。

「わかったわよ。受け取ればいいんでしょ」

ありがと、と言いながら受け取ると、開けてみろよ、と小十郎が言う。もうこうなったら仕方ない。リボンをほどいて箱を開けると、そこにはダイヤのネックレスが入っていた。それほど大きくない粒だけど、とてもきれいな輝きに私は目を見張る。私の買えるものじゃないのは一目でわかる。ちら、と彼を見上げると、彼は私の反応を伺っていて、私は軽く鎖を持って箱から出した。

「綺麗ね」
「お前に似合うと思ってな」
「ありがとう。でも、これ、一体いくら?」
「プレゼントの値段をあれこれ言うなよ。貸せ。つけてやる」
「え・・・・ちょっと・・・・・!」

そういうが早いか私の手からネックレスを取って私の後ろに回る。そして無理やり私の首に手を回してそれを付けてしまうと、彼は私を見て満足そうに微笑んだ。

「似合うな」
「・・・・・ありがとう」
「まぁ、まだ指輪は早いだろうからな」
「・・・・・・・悪いけど、指輪は受け取るつもりはないから」
「言ってろ。必ず受け取らせてやる。覚悟しとけ」
「───────────お断りだわ」

鏡の前まで連れて行かれ、首にかかるそれをまじまじと見つめる。小十郎の言葉を肯定するのは癪だけど、確かに私の好みだった。似合う、と言ってくれた彼は私の好みを忘れているわけではなくて。視線を逸らした私の首筋に軽く唇を寄せた彼に私は慌てて抗議の声を上げ、彼は笑いながら社長の元に戻っていった。

「まったく───────────!」
「おいおい見せつけてくれるねぇ」

小十郎の唇の感触を消すように手でごしごしとこすっていると、長宗我部さんがからかいながら近づいてくる。グラスを持っていない私に飲み物を持ってきてくれたらしい。お礼を言う私に彼は「礼を言うようなことでもねぇだろ」と笑って私の首を指差した。

「それ、右目からか?」
「・・・・・・・・ええ、まぁ」
「へぇ・・・・・・・」
「───────────何か?」
「いや、あんた知らねぇのか?」
「はい?」

きょとんとした私を手招いて長宗我部さんは私にだけ聞こえるようにこう言った。

「男が女にネックレスを送んのはな、この女は俺のモンだから手ぇ出すなって印だよ。ましてダイヤモンドとくりゃ、それを付ける女に手ぇ出したら殺すって言いたいんだろうさ」

と。思わず絶句してしまった私に彼は軽く笑って「右目と幸せにな」と手を振って料理の並べてあるテーブルへと戻っていった。私は何も言えないままぱくぱくと口を開くことしかできなかった。



<Back>