朝食を終えると政宗は毎日の習慣の煙草に手を伸ばす。今日の相伴は小十郎と綱元の二人。二人とも食事を終えているが、一人がまだ箸を持っていて、政宗は軽く眉を上げた。見れば彼女の膳は半分以上残っていて、そのまま箸が止まっていたからだ

「Hey、Honey、随分小食だな」
「え?あ、うん。そうかな?」
「ほとんど食べてねえじゃねえか」
「何かあまり欲しくなくて」
「Ah?」

の言葉に首を傾げる。奥州は冬から遅い春へと季節が移り変わる頃。寒さも日に日に緩んでいき、どちらかというと過ごしやすい日がやってきつつある。食欲がなくなると言えば季節は夏を思い出すが、まだまだ夏は先のはずだ。

「で?小十郎、言いてえことがあるんだろ?」

先程から渋面を隠そうともしない小十郎に向かって笑う。その表情を追いかけては思わず箸を持ったまま固まった。忘れていた。膳に並ぶ野菜はほとんどが小十郎の手作りの野菜たちだ。政宗の口に入るものだから、とかける愛情は半端ではないと知っているだけに小十郎の視線が痛い。

「おい
「は、はい!食べます!!い、今は無理だから後でいただきます」
「無理はすんな」
「───────────へ?」
「料理にゃ食べ時ってもんがある。時間を置いて痛んでしまっちゃ元も子もねぇ」
「ごめんなさい」
「体調が優れねぇなら無理すんじゃねぇよ」
「う、うん───────────小十郎さん、ありがとう」

てっきり小言を言われるか、もしくはどやされるか、と半分覚悟をしていたが、思っていたよりずっと優しい言葉にきょとんとしながらも礼を言って箸を置く。そしてごちそうさまでした。と告げる彼女に政宗は待っていたかのようにちら、と見上げて廊下に控えている八重を呼んだ。

「八重、を部屋に」
「かしこまりました」
「え?大丈夫だよ」
「No、休んでろ」
「あ、う、うん」

そしてが部屋から出るのを見計らって煙草に火をつけた。大きく吸い込んで煙を吐き出すと、政宗はカタン、と煙管から灰を落としてそっとふすまを開けて入ってきた喜多に顎で示す。

「喜多、どうだ?」
「───────────はき、とは申せませんが」
「Ah?」
「確かに、さまがご懐妊されている可能性はございますが・・・・・ですが殿、本当にご懐妊でございましょうか?」
「俺より喜多の方が詳しいんじゃねぇのか?最近のヤツ、酸っぱいものばかり好みやがる。食欲がねぇといいながら、酢の物やゆずなんかはぺろりと食べるだろ?」
「そう、でございますが」

困った顔の喜多がちら、と弟たちを見やる。そもそもの始まりは数日前。と褥を共にした政宗が感じた違和感からだった。抱き心地が変わった、というか、肌の感触が変わった、と。それに原因不明の彼女の食欲不振、それに酸っぱいものを欲しがる傾向から、政宗は噂に聞いていた懐妊かと思ったのだが。

「綱元、小十郎、お前らはどう思う?二人とも子供がいるんだろうが」
「そうはおっしゃいましても、戦場から戻ってきたらもう腹が膨れておりましたし」
「まぁ、殿のご心配も尤もです。妻が妊娠したときは今のと同じ症状があらわれて、あまりに治らないので医者にかかったところ妊娠と判明いたしましたので」
「ってことは決定打はなしかよ」

ち、と舌打ちをこぼす政宗に喜多は小さく溜息をつく。本来なら本人を医者に見せればすむ話だというのに、妙なところで遠慮するものだ、と思う。それもこれも初めてのことに政宗でさえどうしていいのかわからないからだとは思うが、朝食時、を観察していろ、と命じられたときはどうしたものか、と思案したものだが。

「殿、ここはやはりご医師に診せた方がよいと思います。もし本当だとするならば、さまはこの伊達家の嫡子をご懐妊かもしれません」
「嫡子・・・・・!?」
「姉上、それは」
「小十郎、綱元、くれぐれも愛姫さまには真実がわかるまで内密に」

思わず腰を上げる小十郎と綱元を叱咤する喜多に政宗はしばらく考えてから顔を上げる。

「喜多、至急医師に登城させ、を診察させろ」
「かしこまりました。ではさまへのご説明は殿からお願いいたしますわ」
「Ah・・・・Okey」

一瞬喜多へ助けを求めるような瞳を向けた政宗だったが、にこやかに返されて口ごもる。確かに妻の身体を見るのは夫の役目だとは思うが、正直彼女に何といえばいいのかわからない。面と向かって言いにくいからわざわざ喜多に確かめさせていたのに、結局こちらにお鉢が回ってきて憮然とする。仕方ねぇと言いながら立ち上がる政宗と医師を呼ぶために部屋を出ていった喜多を見送って、残された綱元と小十郎が顔を見合わせる。

「さ、忙しくなりそうだ」
「綱元どの・・・・・・」
「小十郎」
「は───────────?」
「執政であるお前に聞く。伊達家のご側室のご懐妊にいくらまで出す?」
「いくら、とは、また直接的な───────────」
「嫡子であれば今の部屋のまま、というわけにはいくまい。奥にもう一つ屋敷をお建てする必要があるね。愛姫さまへのご配慮も必要だろう。未だご懐妊の兆しのない愛姫さまがの懐妊をどう思われるか、またご出産後のご心情も考える必要があるだろう」

直接的な物言いに思わず額を押さえた小十郎だが、綱元が冗談を言っているわけではないのは理解していた。伊達家には世継ぎが必要だ、それは小十郎にもわかっている。当主の政宗はまだ若い。だが政宗が家督を譲られた時、前当主の輝宗は40代の若さだった。若いうちに子を為し、次代へと譲ることが重要であることは言われなくてもわかっている。

「ご嫡男であればいくらでも。ただ姫である場合は別棟が必要だとは思わねぇ。姫であればご養育は愛姫さまにしていただくのがいいだろう。は姫のたしなみにゃ疎いだろうからな。それがわからねぇ女でもねぇだろう」
「まぁ、そうだろうね。さて、と」
「綱元どの?」
「私は姉上と付の女中の選定をしてくるよ。八重一人では手に余るだろう。後のことは任せたよ」

そう告げて部屋を出て行った綱元を見送りながらじっと思案する。大変なことになった、と思う反面、ずっと小さな頃から育ててきた政宗の子が出来た、という嬉しさがこみ上げる。そして彼も自分の役目を果たすべく立ち上がった。


部屋へと追いやられたは八重が用意してくれた座椅子に腰を下ろした。背もたれがある方が楽でございましょう、と笑う八重に頷いたものの、政宗たちと共に居ることのできる時間だったのに、と少し悔しい気持ちで机に肘をついた。

「何だか最近政宗さんが冷たいと思わない?」
「左様でございますか?」
「うん。今日だってさっさと追い出されちゃったし、もうちょっと政宗さんたちといたかったのにな」

愚痴るに八重は苦笑しながら応じてやる。無論政宗や喜多からさんざん問い詰められているからなのだが、八重とてが懐妊しているかどうかなどわかり様がない。確かに最近の彼女の食は少し細いようだし、酸っぱいものを好むようにはなっている。それをそのまま告げてはいるが、異変があればすぐに知らせるように、とくどいくらいに念を押され、さらに当の本人には言わないように、と口止めをされてしまえば八重とてどうすればよいのか迷ってしまう。

「それよりもお身体の調子はいかがですか?」
「あ、うん。大丈夫。ちょっとだるいだけだから」
「まぁ・・・・・・・横になられますか?」
「ううん、ありがとう八重さん」
「いいえ。ご不便がございましたらおっしゃってくださいまし」
「うん」

お茶を淹れての前に差し出して、片付けようとしている八重とそれに手を伸ばそうとしたがふと顔を見合わせる。廊下がいやに騒がしくなったからだ。

「どうしたんだろ」
「見て参りますわ」
「あ、うん」

腰を上げた八重が障子を開く前に、外からそれが開かれる。をかばうように身を寄せた八重だったが、すぐに警戒を解いた。政宗の小姓たちが数名、失礼します、と声をかけて部屋へと入ってきたのだ。

「───────────へ・・・・・?」

確か執務室に置いてあった机だと思うが、うやうやしくかかげられのすぐ隣にそれを置いてゆく。他にも硯や墨、筆や紙の束が運び込まれて、それが終わると小姓たちはまた一礼して部屋を去っていった。

「ええと・・・・・・・これ、政宗さんの、だよね?」
「ええ・・・・・・と思いますが・・・・・・」

首を傾げる二人だが、それからすぐにまた障子が開いて政宗が姿を見せた。ずかずかと部屋に入って用意された机の前にどっかと座って八重に「茶」と命じてから、目を丸くしているに小さく笑う。

「どうした?」
「あの・・・・・政宗さん、これ・・・・・・」
「Ah、今日からしばらくここで政をする」
「は───────────?」
「小十郎と綱元の許可は取った。別に構わねぇだろ」

しれっと告げる彼にそういう問題じゃない、と口に出そうとする前に、政宗の手がの腰に回り、ぐいと引き寄せられる。彼の胸の中に倒れ込むような体勢に抗議の声を上げようとするが、そのまま彼の膝の間へ降ろされてと抱きしめられる。

「政宗さ───────────」
「るせぇ。そのままでいろ」
「ちょっ・・・・・」
、じっとしてろ。暴れると手元が狂うだろ」

抱きしめたまま八重に命じて文を開かせて筆を持った政宗が腕の中で身をよじるの耳元でささやいて、思わずびくりと身体を震わせる彼女にくつ、と笑みを吹き込んで、大人しくなったに満足そうに笑う。当のは八重に助けて欲しいと視線を送るが、八重は逆にこちらを見ないふりで政宗に言われるままあれこれと書類を取ったりと忙しい。その時だった。

「失礼いたします」

外から声がかかり小十郎が顔を見せた。政宗に抱かれたまま慌てて逃げ出そうとするが、がっちりとホールドされたまま動けない。
慌てるを横目に小十郎は無言のまま政宗に書簡を差し出した。

「ま、政宗さん!離し・・・・・」
「政宗さま、こちらを。今年の年貢の石高の予想です」
「Ah、そこに置いとけ」
「では」
「こ、小十郎さん───────────助け」
「おい、暴れんなって言ってんだろ」

政宗の腕の中のには見向きもせず、淡々と用事を済ませて部屋を出ていく小十郎の無言が逆に怖い。思わず手を伸ばしたを政宗はじろりと睨みつけた。

「身体に触るだろうが。じっとしてろ」
「そんなに体調悪いわけじゃないもん。ねぇ、政宗さん、逆に居心地が悪いから離してくれた方が」
「Sorry。俺は今最高の抱き枕を抱えてるからな。当分離す気はねぇ」
「って私の意見は聞く気はないってこと?」
「Of course」

上機嫌の政宗にふぅと溜息をつく。こうなった時の政宗は誰が何を言っても無駄だとあきらめたせいもある。しばらくそうしている時だった。今度は部屋の外から綱元の声がした。「入れ」と部屋の主人を無視して告げる政宗にささやかな抵抗をしてみるが、あっさりと封じられてしまう。そして部屋に入った綱元が政宗に書簡を渡すと、初めての姿を認めたように目を見開いた。

「おや。そんなところでどうしたんだい?」
「どうもこうもないです。あの・・・・・・綱元さん、助けてください」
「Ah?」
「私、そんなに体調悪いように見えますか?政宗さんってば過保護すぎて困ってるんです」
「あー・・・・・・まぁ・・・・・・その・・・・・・・そうだねぇ」

綱元が珍しく歯切れの悪い口調でちらと主君を盗み見てから、軽く肩をすくめる。

「まぁ殿が飽きるまでは頑張って」
「って、綱元さん、フォローになってないですから!」
「あぁ、すまないね。私は殿と違って異国語はわからないんだ。八重、殿とを頼む」
「かしこまりました」

小さく苦笑しながらのやり取りにがくりと肩を落とす。小十郎は基本的には政宗の言い分を通してしまう(そしてが見る限りかなり政宗には甘い)が、綱元は年長ということもあり、やんわりと政宗を諌めてくれることも多いから、と期待したのだが、その彼にもどうにもできないとなると、後は政宗にガツンと言えるのは喜多一人だ。

「え、えと、喜多さんって」
「姉上は殿の命で動き回っているが・・・・・・姉上に何か用かい?」
「い、いえ・・・・・・いいです・・・・・・・」

政宗の命、ということはきっとしばらくは戻ってこれないのだろう。完全に諦めの息を吐いたに同情の視線と口調で慰めて綱元が部屋を出ると無言が落ちた。政宗はを抱いたままだが、本当に政務をこなしているらしい。となれば邪魔をするのも申し訳ない。それに、間近で見る真剣な政宗の隻眼はうっとりとするほどカッコよくて、は諦めて政宗の腕に抱かれたまま身を任せることにした。


どのくらい経ったのかわからない。政宗の机の上の書類はかなりの数が無くなっていて(小姓たちが足しげく部屋に通い出来上がったものから持っていってしまうからだが)、はちら、と彼を見上げる。その視線に気づいたのか、政宗は小さく笑って口を開く。

、しんどかったらそのまま寝てろ」
「───────────この状態で寝れる訳がないじゃない・・・・・・・」
「何だ、俺が気になんのか?」
「当たり前でしょ。で、政宗さん、そろそろ解放してもらいたいんだけど」
「No」

予想していなかった訳ではないが、即答が返ってきてうなだれる。ただ抱きしめられているだけで、それ以上は政宗もするつもりはないらしいが、誰かに見られている状態でこのままというのは居心地が悪い。それにずっと同じ体勢だからそろそろ足も痛くなってきている。抱きしめられている政宗の腕もだるくなっているのではないだろうか、とは政宗を見上げた。

「あ、あのぅ・・・・・・」
「何だ?」
「と、トイレ行きたいんだけど」
「トイレ?」
「あ〜・・・・えと・・・・お手洗い・・・・・・」
「All right」
「きゃぁぁっ!!」

さすがにこういえば解放してもらえるだろうと思っていたのだが、政宗の取った行動はの予想外のものだった。筆を置いて、ひょいとを抱え上げたのだが。いわゆるお姫様抱っこの状態で立ち上がり、八重に先導させて部屋を出る。当然ながら家臣たちがを抱えたままの政宗に目を剥いて慌てて逸らされるのに、はばたばたと足を動かして抵抗する。

「お、下ろしてっ!!」
「いいから黙ってろ」
「じゃ、じゃなくて!!歩けるから!それにトイレぐらい一人で出来ますっ!!」
「心配ねぇ。雪隠の前で待っててやる」
「───────────」

予想もしなかった答えにぱくぱくと口を動かすことしかできなくなる。一体どうなっているのか訳が分からない。少し体調が悪いというだけなのに、政宗を始め小十郎、綱元とこの過保護さは一体何なのか。いつもならやんわりと止めてくれるはずの八重も今日は味方になってくれないらしい。恥ずかしさに顔を伏せたまま手洗いの前で下ろされると、政宗はちら、と八重に視線をやる。暗について行け、という意味らしいが、八重は苦笑交じりにの顔を伺ってくる。その視線には慌てて首を振る。例え八重だとて用を足しているところに同席されるのは遠慮したい。

「だ、大丈夫だから!!政宗さんも八重さんも部屋に戻ってて!!」
「Ah?この間にお前に何かあったらどうするんだ?」
「何もないから!あの、トイレぐらい一人で行かせて!」
「八重、戻ってろ。俺が待ってる」
「しかし・・・・・・」
「いいから!政宗さんも戻ってて!!」
「おい
「もぅ!二人とも一人にして!!」

言い捨てて扉を開いて中に入ると鍵をかける。しばらくそのまま待って、隙間から覗いてみれば、八重は部屋に戻ったらしいが、政宗は腕を組んだままじっと自分を待っているのが見える。仕方なく用を足してそこから出ると、政宗がすぐに近寄ってきて、手洗いをの水を汲んでくれた。本来なら当主である彼がこんなことをするはずもない。「ありがとう」と告げると、政宗は笑っただけだった。

「あのぅ、政宗さん?」
「何だ?」
「一体どうしたの?」
「何がだ?」
「何がって・・・・・・何だか変だよ」
「Ah?」
「何かあったの?」
「普通側室が体調を崩したら心配するだろうが」
「あ・・・・・そういうこと・・・・・・ちょっとだるいだけだから。風邪ひいたとかじゃないし」
「喜多に侍医を呼ばせてある。後で見てもらえ」
「・・・・・・はぁい」

どうやら彼らにかなり心配をかけているということは理解した。それにしてもあまりにも過保護だろう、とは思うが、真剣な瞳に見つめられてしまえば抵抗らしい抵抗もできなくなる。抱きしめられるままに身を任せて嬉しさと気恥ずかしさにうつむいたの唇に政宗は自分のそれを軽く触れ合わせる。

「ほら、戻るぞ」
「うん」

こんな風に大切にされたことはほとんどなかったから少しくすぐったくもあるし、甘やかしてくれる政宗の心持が嬉しい。抱きしめられたまま膝を救われると、またお姫様抱っこのまま抱えられて部屋へと戻る。今度はも抵抗しなかった。甘えるように政宗の胸にすり、と頬を寄せた。



その日の夕方、侍医の診察を受けそのまま横になっていた。政宗たちは今は侍医と共に席を外している。先日来だるいとは思っていたが、トイレに行ったところ生理が始まっていて、だるい原因はこれか、とがくりときているのだが、休んでいろ、と言ってくれる
のに甘えてゴロゴロとしているのだが。

「うー・・・・・腰痛い・・・・・・・」
さま、殿より口止めされておりましたが、お耳に入れたいことが」
「八重さん?どうしたの?」

あれこれと世話を焼いてくれる八重が何やら意を決したように顔を上げるのに驚いて身を起こす。普段はにこにことよく笑う彼女のこんな表情を見られるなど稀だ。

「実は───────────」

八重の言葉に耳を傾けようとした時だった。ドタドタという走るような足音に驚いて顔を上げる。これほどの足音を響かせて走ってくるとはただ事ではない。立ち上がろうとした途端、締まっていた障子がスパンと開いた。

「政宗さん?」

そしてそこに立っていた政宗の表情に思わず身を縮ませる。まるで戦に行く前のような殺気と鋭い視線に射竦められる。

、Come on」
「は、はい・・・・・・・」

無論逆らうことなどできるはずもない。おずおずと政宗の前へと進み出ると、政宗はじろ、と八重を見る。

「人払いだ」
「かしこまりました」

その迫力に八重も逆らえるはずもない。頭を下げて部屋を出ていったことを確認すると、政宗は部屋に入ってきてから後ろ手で障子を閉める。

「なぁ
「な、何・・・・・・・?」
「そろそろ俺たちにも子が出来てもいい頃だよなぁ」
「───────────へ?」

そう告げながらじりじりと布団の方へと追いやられているのに気付いたが政宗から視線を逸らした時だった。ぐい、と引き寄せられて抱き上げられる。

「朝まで子作りと励むとするか、Honey」
「ちょ、ちょっと待っ・・・・・・!!」
「Ha!待てる訳ねぇだろ。散々俺たちを翻弄してくれたお返しもしなきゃいけねぇしな」
「それって何の話!?」

あまりにも突然すぎる政宗の言葉に目を丸くするに、にやりと笑うだけで何も返してはくれない。生理が来たことを思い出してじたばたと暴れるが、政宗の腕はぴくりともしない。そして布団に背中から下ろされると、政宗はに覆いかぶさりながら告げた。

「psyche up」

耳朶に響く低音に抵抗できるはずもなく───────────結局政宗に一日中翻弄されてしまい、翌日八重から慰めともいえる言葉と真相を聞かされた咲は、呆気にとられしばらく政宗を出入り禁止にしたという。



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