「───────────ん・・・・・・・」

触れ合うだけのキスから政宗の舌先がの唇を割り込んで中へと入り込む。歯列を探り、の舌と触れて二人の唾液が混ざり合う。開いた唇から甘い声が漏れれば、政宗のキスの激しさが増した。

「ふ・・・・・ぁ・・・・・・」
「ん・・・・・」

唇から響く水音と奪われる吐息に頭の中が真っ白になってゆく。を抱きしめたままキスを続けていたが、息が完全に上がってしまうまで堪能すると、その身体を離す。

「ダメだ、我慢できねぇ」
「政宗・・・・・さん?」

耳朶に触れる政宗の吐息にふる、と身をふるわせて見上げた途端だった。腰に回されていた腕が膝の下に回って抱き上げられる。

「え・・・・・・ちょっ・・・・・」
「黙ってねぇと舌噛むぜ」
「あの、政宗さん!?」
、あんなキスをしといてお預けなんてナシだろ」

抱き上げられて慌てるを布団に運ぶ。二つ並べられたそれに下ろされては思わず息を飲み込んだ。その意味を分からないほど子供ではない。夢心地でろうそくの火に揺れる室内はゆらゆらとどこか幻を見ているようで、ぼぅっと天井を見上げたままのに政宗はゆっくりと覆いかぶさった。

「どこを見てる?」
「ろうそくの火・・・・・・天井に映って綺麗」
「Ha!余裕だな。悪ぃが俺にはそんな余裕がねぇ」
「政宗さん」
「Ah?」
「好き、だよ──────────大好き」
「───────────っ!?」
「政宗さんは、私のこと好きだと思ってくれてる?」
「思ってなかったらこんなことはしねぇよ」
「ひゃぅっ!!」

つい、と首筋のラインを撫でられて声を上げるの反応を見てクックッと笑う意地悪な笑顔には頬を膨らませる。

「だって聞いてないもん」
「何を?」
「私のこと、好きだって言ってくれてない、から───────────」

横たわったまま告げるの唇を自分のそれで塞いで、もう一度キスを送ると、政宗はの首筋に顔をうずめる。

、愛してる」
「───────────」
「お前だけを、愛してる」
「政宗、さん・・・・・・・」
「だから、俺だけのものになれ」

命令形なのにどこか懇願を含んだような政宗の声に、はこくんと頷いた。これで後悔はない。もし自分の身体の痕を見て彼が自分を嫌うとしても、一度は自分の一番欲しかった言葉がもらえたのだ。涙が出るほど嬉しかった。熱を込めた左目が見下ろす彼の腕に手を伸ばして、無言のまま自分に引き寄せる。

「All right。覚悟できてんな?」
「───────────うん」

頷いた瞬間、先ほどとは違うむさぼるようなキスに目を見張る。抱きしめられ、欲望のままに舌を差し入れて蹂躙される。息が苦しくなって政宗の腕をつかんだ腕に力をこめれば、政宗の右手が胸からするりと中へと入ってゆく。

「ん───────────っ!?」

肌を楽しむようにゆっくりとなぞってゆく手のひらにふる、と身体が震える。逆の手は帯にかかってするりと抜き取ると、着物をはだけさせた。

「ぁ・・・・・・・っ!」

空気に肌がさらされて息をのむ。あらわになった胸を両手で隠そうとすれば、政宗の左手にひとまとめにつかまれ頭上で戒められる。恥ずかしさに身をよじろうとする肩を押さえつけられた。

「や・・・・・見ないで・・・・・・!」
「聞けるわけねぇだろ」

先に肌をなぞる手が首筋から肩を通って膨らみに触れる。ゆっくりと揉みしだかれる感覚には首を振る。

「あ・・・・・ゃ・・・・・」
「柔らけぇ」
「や、やぁ・・・・・・」

キスを落とされ、それに答えようと舌を絡ませる。だが政宗はすぐにの唇から真っ赤になった頬をたどりながらキスの雨を降らせる。そうして耳元までリップ音をさせながら移動すると、ふぅと耳に息を吹き込まれる。

「ひぁっ───────────!」
「もっと声出せ」
「あ・・・・・・」

かぷ、と耳たぶに歯を立てられて身体がはねた。その反応にくつ、と笑いながら首筋へと舌先で辿って───────────、政宗は思わず目を見張る。そして一つ一つ確かめてから身を起こした。

「おい、これ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

暗闇にもわかる、明らかに女性にはあるはずのない痣。それも一か所だけではない。古いものではあるのだろうが、所々色素が沈着してしまっている。肩から上腕、腹部、腰巻の裾を割れば、ふくらはぎや太ももにもいくつもそれは点在していた。

「───────────ごめん」
「何でお前が謝んだよ」
「黙ってて、ごめん。だって、抱きたくないでしょ?こんな身体」
「Ah・・・・・?」
「ごめんね。だから、今日のことはなかったことにしよう───────────」

情事の最中に身を起こした政宗に「ああ、やはり」と自嘲する。求められるのは嬉しかったが、の一番の不安はこれだった。何度も繰り返し暴力を受けていた肌は決して綺麗とはいえない。あちこちに痣や、切り傷の痕が点在している。愛姫を始め美女揃いの政宗の側室たちを抱いている彼ならきっと忌避するような傷跡。暗い笑みを浮かべた彼女に政宗はぎり、と歯をかみしめた。

「ふざけんな」
「政宗さん・・・・・?」
「これ、お前の男が付けた痕か?」
「・・・・・・うん。何度も殴られたし蹴られたの。もう痣が消えないんだ。ここに来て3か月以上経つのにね。気持ち悪いでしょ」
「ふざけんな!何で笑ってられんだよ・・・・・・こんな・・・・・こんなことされて、何で笑うんだ・・・・・」
「笑うしか、ないもん・・・・・だって・・・・・何をしたって・・・・もう、消えないんだよ・・・・・ねぇ政宗さん、私、嬉しかった。『愛してる』って言ってくれて、本当に幸せだった。だから、終わりにしよう。でも、お願い・・・・・名前だけの側室だけでも側においてくれるだけで・・・・いい、から・・・・・嫌いに・・・・なっても・・・いい・・・・から・・・・できれば、側にいさせて・・・・・・」

嗚咽が漏れそうになるのを必死でこらえる。好きだから抱かれたかった。でも、普通の男はこんな痣だらけの女は嫌いに違いない。「ごめん」と謝って身を起こして夜着をまとおうとした腕をつかまれる。


「───────────」
「俺は承知してねぇぜ」
「・・・・・・だって・・・・・仕方、ない・・・・じゃな・・・・政宗さんなら・・・・もっと可愛い人が・・・側に・・・・」
「るせぇ。だったら俺が消してやる」
「───────────っ!?」
「毎日お前を抱いて、俺のモンだって証にしてやる」
「・・・・・まさ・・・む・・・ね・・・・さ・・・・・」
、泣くなよ。今からは誰にもお前にこんなことはさせねぇ。一生俺が守る。但し───────────」
「え・・・・・・・」
「俺の他には絶対誰にもこの傷を見せんな。これを知ってんのは俺だけだ」

再び肩を押さえられ布団に押し付けられる。ぎゅっと抱きしめられて耳元で聞こえた政宗の声に、は涙をこらえられなかった。そんなことを言ってくれた人は誰もいなかった。ぽろぽろと涙を流すの頬にキスを落として政宗はその唇に自分のそれを重ねる。長いキスの後、政宗はとろけるような声での耳朶にささやいた。

「痕を消すにゃ時間がかかる。それまでずっと俺が抱いててやる。だから俺だけのものになれ」
「ま・・・・・さ・・・む・・・・」
「泣くなよ。いいな?。約束しろ。俺だけのものになると」
「・・・・・・うん・・・・・約束、する・・・・・・政宗さんだけのものに、なる」
「All right。今日は寝かせねぇからな」
「───────────うん。政宗さん」
「何だ?」
「あり、がと・・・・・・・」

涙ながらの声に政宗はの身体をぎゅっと抱きしめて唇を重ねる。もまた政宗の背中に手を回したのだった。



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